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2013.04/19 (Fri)

出会い

履きなれないヒールの音が
大理石で囲まれた重厚なロビーにこだまする。

ここ数時間くらいの間、彼女の心臓は爆発寸前まで追い込まれていたー

連休の始め、皐月の夕暮れ時。
駅前は人で溢れていた。
爽やかでひんやりとした風が、彼女の肩まで伸びたくせ毛をふわふわとくゆらせ、都会を歩き慣れていない雰囲気をかもしだし、通る人の間をぎこちなくぶつかりながら約束の場所へ急ぐ。
駅の上にそびえ立つ二つの塔が、彼女を見下ろしていた。
ゴクリと喉が鳴る。
ここで、これから何が起こるのか、何が待ち受けているのか…
言葉にした全てが現実になる気がして、彼女は何度目かの戸惑いを感じ、2・3歩後ずさりした。

それでも、ここまでやってこれたのは、他ならぬ内なる自分の中にある、淡い期待のせいだろう。
ずっと待ち焦がれていた
ずっと胸に秘めていた
そんな秘密の宝箱を今日、開けようとしているから。
それはパンドラの箱かもしれない。
たくさんの悪夢の中に一粒の希望。
その希望にすがりつく。

エレベーターは彼女の気持ちとは裏腹に高速で上階へ向かう。
街が離れて小さくなる。
人が米粒くらいの大きさになってエレベーターは目的の階で止まった。
街を見下ろせるようガラス張りになっているテラスに、カップルが2組ほどいた。窓の手すりに寄りかかり彼女も街を見下ろした。
高くてめまいがする。
ふらつきながら近くのソファーに腰をおろした。
楽しそうに話すカップルを見つめ、自分にもあんな過去があった事を思い出した。
純粋で、幼稚で…
でもとても幸せな日々。
羨ましいなと見つめていると、後ろから声をかけられた。

「ちこ。」

…そう呼ぶ人は、この世でたった一人しかいない。

身体のありとあらゆる神経が自分の背後にまわった。
怖くて振り向けない。

「おい。」

心臓の鼓動がうるさい。
息ができない。
怖くて怖くて、ここから逃げ出したい。
でも足がすくんで動けない。

「おいって。こっち向けよ」

恐る恐る振り向いたはいいが、今度は顔があげられない。

恥ずかしくて恥ずかしくてたまらない。
このまま消えてしまいたい。

もっと綺麗な、
もっと素敵な女性だったら。
こんなまどろっこしくなく、魅力的に堂々と振り向けたんだろうに…そう思うと余計に自分を掻き消してしまいたくなる。

会えた嬉しさよりも、自分を恥じてしまう自分が嫌だった。
彼の前で笑えない自分が情けなかった。

どんな自分だと思われてもいい。
それでも、私はこの人が好きで、
何度も忘れようとしても忘れる事ができなかった憧れの人を、今目の前にしている。
だから…。
これが終わりになってもいいように、
これで永遠に忘れなくてはいけなくなってもいいように。
ここに心を決めて来た。
どんなに恥ずかしくても、どんなに否定されても彼に会いたい気持ちが優ったから、ここまで来た。

そう…ずっと会いたかったの。
焦がれて焦がれて、眩しい
太陽みたいな貴方に…。
目が焼け焦げてもいい。
溶けてしまってもいい。
それでもいいから、貴方に触れたい。

だから、ここに来たの。

貴方を手に入れたくて…。
貴方を誰にも渡したくなくて…。

外は群青に染まり、街は光に溢れていた。
魔法の時間が始まる。
幻想を現実に変え、朝日がこの世界をもう一度照らすまで…。
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